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小さな猛禽が教えてくれたこと

先日、小型の猛禽類のツミを保護しました。
夫のK氏が玄関を開けたら、目の前にちんまりと佇んでいたのです。

「あきえさん!大変!誰かいる!」
「え?」
「玄関脇でぼーっとしてる!」

急いで見に行くと、
ほんとだ…玄関脇の地面にツミがぼーっと座ってる(立ってるけど)

ツミちゃん?
どうしたの?
近寄っても逃げません。

と…触れそうなくらいまで寄ったら逃げました。

でも、ふらっふらでまともに飛べません。
お隣の庭に落ちたように見え、不法侵入して探しました。

飛べるならわざわざ捕まえなくてもいいか。
いや、でもあれは飛べたうちに入らないよね。

創造主、保護が必要なら見つけさせて?

「ぴぃ」

声がしました。

「やっぱりあそこらへんにいるみたい(指差し)」

そうK氏に言うと、引き返してもう一度不法侵入して、

「いた!」

連れ帰り体を調べても外傷はありませんが、まっすぐ立っていられません。

保温ケースに入れても壁に寄りかかるようにして立っています。

寒いのでヒーターにあたってます


もちろん何も食べません。
脱水しているようなのでブドウ糖液をあげました。

「いやあ、猛禽だねー」

K氏が感嘆の声をあげて、写真撮りまくりです。
そうなんです。
初めて猛禽類を間近で見た人は、大抵その美しさと凛々しさに感動するんです。

この子は、オレンジ色の美しい虹彩が本当に印象的でした。
オスでしょう。

美しい褐色の虹彩と鋭いくちばし

ふと、昔、ツミのヒナを保護して野生に帰したことを思い出しました。

小ちゃくても立派な猛禽で、眼光の鋭さに感動したのを覚えています。

ツミちゃんは物怖じせず、餌もよく食べてくれました。
でも、すごく人見知りをする子で、わたし以外の人間が近づくのを嫌いました。

兄弟と比べても体の小さい子でした

当時はうちにフクロウもいたのですが、
「もしかして、プーちゃんがお父さん役をやってくれるかも」と一瞬期待したのですが、お互いに知らんぷりでしたw

始めは生き餌を小さくちぎって与え、徐々に慣れさせて自分でちぎって食べられるようにし、
そうしながらも人に懐かないよう距離を置いていました。

早く親元へ帰して狩りの訓練に参加させてあげなければと、可愛がることも自粛していました。

本当はむぎゅーっとして、こねくり回したかったのですが…

野生に帰っていく生き物にとって、人が可愛がることが彼らの成長の邪魔になってしまうことは、十分過ぎるほど分かっていたのです。

そして、無事に大きくなって、親兄弟の元へ連れて行き放鳥する日がきました。

とても落ち着いた子でした

営巣場所の近くにケージを運んだ時、親はちゃんとこの子を覚えていて、近づいて来ました。

これなら狩りができるようになるまで面倒をみてもらえると、ほっとました。

ですが、兄弟にはなかなか受け入れてもらえませんでした。
(兄弟はなんと6羽もいたのです。)

一番小さくてひ弱だったはずの子が急に大きくなって現れたのですから、無理もありません。

成長は追いついても、狩りの訓練には出遅れていたし、なかなか餌にもありつけず何日かすぎました。

その間、ツミちゃんはいつも1人でいました。

厳しいなあ…
でもこれが自然なんだよなあ

がんばれー!と、応援することしかできませんでした。

そんなある日、
兄弟の一羽が捕ってきたムクドリをうっかり落とした時に、うちのツミちゃんがサッと地面に飛び降りて、人間の足元でそのままパクパクと食べ始めたのです。

そこは大きな公園でしたので、野鳥観察をしていたギャラリー達は大興奮です。
集まってきて写真を撮り、拍手をしていました。

ちゃっかりしてる…
これなら大丈夫だね。

それから2週間くらいして、公園の鳥好きさん達からの連絡で、ツミちゃんがとうとう自分で鳥を捕ったこと、そして家族全員で別の場所へと移動して行ったことを知りました。

美しい若鳥になったツミちゃん

あの子はあれから独り立ちして、家族を持ったのかしら。

そんなことをつらつらと思い出しながら、目の前の大人のツミちゃんを眺めていました。

「あなたはどお?家族はいるの?もう一度お外に帰りたいよね…」


ですが、
残念ながら、このツミちゃんは外に帰ることなく、数日後にあっけなく虹の橋を渡って行きました。

自分に何ができたろう、
もっとすべきことがあったのでは、
本当は保護しなくても良かったのでは、

頭に浮かぶ思いは消しました。

そんなことを悔やんだりは、もうしません。

できることしか、できないんです。

「その時」が来ただけなんです。

わたしの役割とか、そんなものもどうでもいいのです。

ただ、あの子の今生での最後の時に関わって、お互いに何かしら影響を与え合った。

それだけで十分でした。

もちろん、元気になって飛んで行ってくれたら…と願ってはいましたが。


それから1週間ほど経ったある日、うちの鳥達が一斉に何かに驚き、騒ぎました。
みんな外を気にしています。

変だなと思い、外へ出ると庭にツミがいました。

この前のツミちゃんよりもずっと大きく、目の色の明るい子です。
猛禽は大抵メスの方が大きいので、この子もメスでしょう。

どうやらスズメを狙って来たようですが、空振りに終わったようです。

芝生に翼を広げて立ったまま、こちらをじっと見ています。

「なによ」

「あ、いや。なんでもないです。」

「……」

まだ見てる。

「もしかして、あの子の、ツミちゃんの奥さん…ですか…?」

ひらりっ

すぐ上の木の枝へと止まり、まだこちらを見ています。

ああ…
間違いない。
この子は連れ合いなんだ。

同じ狩場にいるなんて、絶対そうだ。

それ以上に、直感的な確信がありました。

「ツミちゃん死んでしまったの。
ごめんね。何もできなくて。
ごめんね。1人になっちゃって…」


「そんなこと、あなたに関係ないわ。」

ふわり…

飛んで行ってしまいました。

「ごめんね。奥さんがいるって知らなかった。」

彼女は夫の帰りを待っていたのでしょうか。

未亡人となった彼女の存在を知って、わたしの心は痛みました。

そして

やっぱり、責任を感じていたことを知りました。

何ができたわけでもないのに。

せめて、伝言でも預かっていたら。


「あのー」

え?

「もう出てもいいかな」
「こわいひと、いなくなった?」

エアコンの室外機の下に数羽、スズメ達が隠れてこちらを見ていました。

「ああ、ごめんね、うん。きっと今日はもう彼女は来ないよ。」

やれやれ、とパタパタ飛び立つ小さな鳥達。

いつの間にか、ツバキや南天に隠れていた子たちも出て来ていました。

そうして再び、庭で食べ残しの餌を啄んだり、雑草の種を食べたり、水浴びをしたり、
いつもの日常に戻っていました。

なんて立ち直りが早いの。

命を狙われた後なのに。

夫を亡くした、あの奥さんもそうだ。
1人でだってちゃんと狩りに出て、生きることにフォーカスしている。

泣き言も、恨み言も言わなかった。

昔放したツミちゃんだって。
餌が捕れなかったらどうしようとか
失敗が恥ずかしいとか

全く怯むことなく、なんとしてでも生きようとしていた。

みんな、みんな、なんて力強いんだろう。


そして疑問が湧きました。

どうしてだろう。

どうして人間はこんなに弱くなってしまったんだろう。
人間だって、食物連鎖の頂点にいる生き物なのに。

辛いことがあったり、傷ついたりすると、
「もうだめ」と、生きることを諦めてしまう人がなんと多いことでしょう。

かつて、わたしもその1人でした。

人間には進化の過程を経た素晴らしい脳があるのに。
どうして彼らのような勇敢さを忘れてしまったんだろう。

昔の傷にいつまでも怯えるのは何故なんだろう。

サバイバルを超えて、その先を生きているはずのわたし達が、どうしていつまでも心の幻影に囚われ続けるんだろう。



いい加減、目を覚まさなくちゃ。

今を真剣に生きなくちゃ。

自分が何者なのかをはっきりと自覚して生きなくちゃ。


いつかまた、彼らに出会った時、

「どの瞬間も、わたしはわたしを体験しきったんだよ。あなた達のような勇敢さを持ってね。」
と、胸を張れるように。

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著者

鳥とシータヒーリング®︎をこよなく愛するヒーラー。
潜在意識への働きかけ、アカシックレコード、波動調整などのエネルギーワークを併用して、喜びに溢れた人生をクリエイトするお手伝いをしています。

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