空を飛んだクーちゃん 〜後編〜

草むらでボーッとつっ立っているクーちゃん。

「クーちゃん!

戻ってきたの?クーちゃん!!」

心が枯れたような感覚で目が覚めました。

そして、クーちゃんはお別れを言いに戻ってきたのだと思いました。

帰ってくるのを信じていたけれど…

いなくなって以来大雨が続いていたし、食べるものなんて柿くらいで、とても生き延びることなんてできないと考える方が自然です。

「創造主、クーちゃんはひとりぼっちで寂しかった?うちに帰ってきたかった?」

「大丈夫だよ。一人になったことなんてないよ。お前が地球だったら、どうやってクーを迎える?」

「わたしが地球だったら…限りなく優しく、暖かく受け入れて、ずっとそばにいてあげる。世界は安全で何も怖がらなくていいよって。」

「だろう?だから大丈夫なんだよ」

朝ごはんの時、夫に言いました。

「クーちゃん、死んだかも。さよなら言いにきたのかも。」

「うん…」

その日は師匠のところでインナーサークルの再受講だったのをコロッと忘れていて、頭が痺れたみたいになったまま車を飛ばしました。

実家のような師匠のサロン。

あといるのはオンラインの画面上の仲良しのシータヒーラーだけ。

二人が先に楽しげにおしゃべりをしているのを麻痺した心でうすら笑いを浮かべて見てました。

「…だよねー? あきえさん?」

……

「あ、うん、

ちょっ、今朝…」

突然、何かが崩れました。

「ぅぅわあああああ

うわああああ!

クーちゃんが死んじゃったああああああ

わああああん

帰ってくるって言ったのに

創造主が、お前が地球ならどうやってクーを迎えるかって

わたしが地球なら、絶対絶対、優しく受け入れるから、絶対安全に受け入れるから、絶対大丈夫だって

大丈夫だってわかってるのに。でもそれとこれとは○*+×@…!」

「そうかそうか。悲しいものは悲しいよね。泣いちゃえ、泣いちゃえ。」

ひとしきり子供のようにわあわあと泣き、頭も心も空っぽになりました。声を出さずに泣くことしかできなかったわたしが、こんな風に泣くなんて。

インナーサークルのクラスは開始早々、わたしが既に安心と信頼で満ちた環境で親しい人達との関係を築いているのだと、確認させてくれたのです。

わたしが地球だったら。

そう答えた時の感覚は今でもはっきりと残っています。

わたしは大地で空で水で、全ての生き物たちを生も死も関係なく、ただ愛で受け止めているのです。

だから、例えクーちゃんが野垂れ死にをしたとしても、ちっとも可哀想ではなくて、不幸でもなくて、ただ完全な愛に寄り添ってもらって土へと還っていくだけなのです。

一人で寂しいことなんかないのです。
わたしは常に一緒にいるのだから。

世界は安全。

その感覚は、大きな支えでした。

ともすれば悲惨な出来事でトラウマにしかならない体験を、こんな壮大な観点から体験したのです。

そしてその翌日。

夫が朝のランニングの途中で、傷ついたレース鳩を拾って帰ってきました。なぜか、片側の翼だけを切られて飛べずにいたのです。

冷え込んだ朝、飛べずにいたところを発見

***

「大きな体験だったね」

その後DNA3のクラスを受けた時、先生に言われました。

「しかもさ、クーちゃんのいない縁側を見るのが辛いと言ったら、ポッちん(鳩)拾ってくるなんてね」

「それもミラクルだ」

「でもやっぱり悲しいものは悲しくて。なんども創造主のバカっ!クーを返せ!って言った。あはは。」

「あはは。あるある。」

この出来事の後にDNA3のクラスを受けることになったのも素晴らしいタイミングでした。
長年の自分のテーマとも向き合い、内側にも外側にも大きな変化が起きたのですから。

クーちゃんがいなくなって1ヶ月。

貴重な学びがあったことを受け入れていましたが、やはり家の近くのぶどう園や栗林を見ると、張り裂けそうな気持ちで探し回った日々を思い出し胸が痛みます。

あの日の前に戻って、別の未来を創ったらどうかな。

そんなDNA3的なことをやってみたり。

ここは違う地球でさ。

クーちゃんが帰ってくるバージョンにいるとしたら?

元気を取り戻しつつ、セミナーを開催したり、ポッちんの看護をしたり、忙しく過ごすことに専念したのです。

そしてある朝。

その日はサロンの掃除のためにいつもよりも早く家を出ました。

自転車で行こうと思ったけど荷物が多く、夫が車で送ってくれるというのでぼんやりと助手席に座っていました。

いつもの栗林を通った時、草むらを歩いてるカラスを見て夫が

「クーちゃん」と呼びました。

「何?カラス見かけるたびに呼びかけてるの?」

「えへへ、なんとなくね」

「ふうん…」

その言葉が言い終わらないうちに、いきなり動いている車のドアを開け飛び出している自分がいました。

「えっ?どうしたの?え?」

走って行き、栗林を囲む低いネットの柵にへばり付き、カラスを見ます。

この光景は、

この光景は、

この光景は、

まさかまさかまさか

車を警戒しているのか、カラスは離れたところからこちらを見ているだけです。

狭い道に車を置けないので、夫がバックで家の前まで車を移動させて行き、視界から消えました。

突然。

カラスがこちらへ歩いてきます。

まさかまさか

首のところの羽が薄くなっています。

クーちゃん!!!!!!!!!!

スタスタと近づいてきて、わたしを見上げます。

クーちゃああああああああうわあああああああああん

間違いない!

この毛引きの跡!

この目!

膝から崩れ落ち、ネットにしがみついて号泣。

「クーーーーーーッ!クーなの????」

夫が走ってきます。

「クーーーーーーーーーッ!」

ネットを飛び越えて駆け寄っていく夫。

「ぐもっ」

くぐもった声で答えますが、捕まえようとするとヒョイッと逃げました。

「ちょっ!まっ!」

そうだった、クーちゃんは抱っこが大嫌いだった。

走って逃げるけど、遠くにはいかない。

翼がおかしい、折れてるかも。脚もびっこだ。

二人で挟みうちにして着ていたジャケットを投げて捕獲。

そして抱きしめました。

「ぐもも」

もう抵抗はしません。

大人しく抱かれているのは、紛れもなくクーちゃんです。

「クーちゃん!クーちゃん!クーちゃん!」

こんなに痩せて。

こんなに軽くなって。

こんなにボロになって。

クチバシも爪もこんなに鋭く尖って。

翼まで折れて…

信じられない

こんなことって

人に育てられたカラスが外で何を食べてたの。

1ヶ月も。

あり得ない。

その日、夫は仕事が休みだったので一日中クーちゃんと一緒にいたそうです。

何度もごはんをもらって。

たくさん撫でてもらって。

クーちゃんを連れて帰った時のニコちゃんの叫び声は忘れられません。

「わあああああ!わあああああ!わあああああ!」

だよね、おんなじ気持ちだよね。

創造主はちゃんと帰って来るって言った。

本当に帰って来た。

わたしは恐れに負けて、観た映像を全く逆の解釈で受け取ったのでした。

草むらでぼーっと突っ立ってるクーちゃんの夢は、まさしくあの時のクーちゃんの姿だったのです。

真実を観ていたのに、恐れがそれを受け取らせなかった。

すぐに心配してくれていた先生たちにメールをしました。

「うあー!いま通訳中!泣いてはいかんー!でも無理ー!」

「わあああああ!クーちゃーーーーん!涙腺がああああ!」

「うそおおおお!すごーーーーーー」

「えええええええ!????」

みなさま、本当にその節はお世話になりました。
どれだけ支えられたか、感謝の限りです。

***

あれから1ヶ月。

クーちゃんはすっかり体調も回復して元気にいたずらし放題です。

翼の骨折も治り、まだ飛べないけれどそれなりに適応して、室内では何不自由なく暮らしています。

性懲りも無く、外に出て水浴びもしています。

帰宅直後、立っているのがやっと。安心したのか放心状態
テーピングを外さない お利口さん

そんなクーちゃんの復活を見届けたかのように、つい先日レース鳩のポッちんが旅立ち、今日火葬してきました。

この子がいなかったら、空っぽの縁側に耐えられなかっただろう。

元々病気だったのか、どうやっても体重が戻らず、痩せ続けたこの2ヶ月間。

紙のように軽くなってしまい、創造主がもう強制給餌もやめなさいと言いました。

そんな風に弱りながらも、ポッちんは亀たちとの日向ぼっこを楽しみ、他の鳥たちを珍しそうに眺めて過ごしていました。

誰とでも仲良くできるという美徳の持ち主

人に愛されることをしみじみと味わうように、撫でてやると目を細め、特製ブレンドの餌を入れてやると翼をわきわきさせて喜んでいました。

最後にたくさんたくさん手をかけてもらって、たくさんたくさん愛されて、保護した時の目とはまるで違う目になっていました。

「わたし達を救ってくれてありがとう。またいつか会おうね。今度はもっとゆっくりしていってね。」

抱っこされると安心なのか、すぐ寝ます
霞ヶ浦の近くで火葬してもらいました

今回の一連の出来事は、本当にたくさんのことを教えてくれました。
霊的な気づきが体感を伴ってやってくるというのは素晴らしい体験です。

奇跡って

本当に起きるんだ。

ねえクーちゃん。

どんな大冒険をしてきたの?

これからはずっと一緒だよ。

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鳥とシータヒーリング®︎をこよなく愛するヒーラー。
潜在意識の書き換えと各種エネルギーワークを併用して、喜びに溢れた人生をクリエイトするお手伝いをしています。

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