空を飛んだクーちゃん 〜前編〜

 

2ヶ月ほど前、父の四十九日の前日、クーちゃんが消えました。

「消えた」と言うのが一番しっくりくる表現です。

いつものように破いた網戸の隙間からお外に出て、縁側の前のポーチで一人遊びをしていたクーちゃん。私道にトラックが入って来た音が聞こえ、大丈夫かな?とふと思ったのを覚えています。

それから少しして庭を見た時には姿がありませんでした。

30分ほどの間にどこかへ行ってしまったのです。

驚いて飛んでしまって、近くに隠れてるんだろう。
以前もお隣の車の下に隠れてたことあるし。

近くを探しまわりながらも、すぐに見つかると思っていました。

午後1時過ぎに気づいてから探す範囲を広げて、気づいたら暗くなっていました。

その頃になってようやく事の重大さを受け入れ始めたのです。

 

「創造主、クーちゃんはどこ?戻るでしょう?」

「戻るよ」

そう聞いてホッとしました。

ですが、どうしてもリーディングができません。

全くどこにいるのか感知できないのです。
ただ、すごく隠れている感じだけがします。

気配も消してしまっているようでたどれません。

40年以上も野鳥の保護をしてくる中で培った超感覚。
シータヒーリングを習うはるか前から鳥との間ではテレパシーは普通に使えました。

放鳥した子を思うだけで窓から飛んで入ってきたり、それこそ網戸を破って脱走したフクロウのヒナ達だってちゃんと帰ってきたし、SOSを出されれば眠っていても飛び起きてパジャマのまま助けに行くことすら何も考えずにできていました。

鳥を飼ったことがある方なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
「逃げちゃった!」事件。

飼ってた数が多いので逃してしまったことも数えきれないほどありますが、わたしの場合、百発百中でみんな帰ってきていたのです。

セキセイインコだって帰って来れるのに。

カラスが帰れないわけない。

ましてや、普段から家と外を自由に出入りしてた鳥が帰って来ないことなんかあり得ないのです。

ただ唯一、本人が行くと決めた時以外は。

まさか、そうなの?

いや、信じよう。

愛と光を送り、そばにいるよ、大丈夫だよと懸命に呼びかけ続けました。

そして、クーちゃんのいない縁側を見ることが耐えられず、ここぞとばかりに掃除し始めたのです。

「帰ってきたら綺麗になってて驚くかな?
でもこんな掃除の仕方は死んでしまった時の態度みたいだよね」

「…。」

あ…

しまった。

夫が崩壊寸前だ。

クーちゃんは7歳までよそで飼われていたのですが、事情があってうちで引き取りました。

以前もブログで少し触れましたが、初めて出会ったその瞬間に目を輝かせて夫の肩に乗り、「大好き!」と歌を歌ったのです。

おとーやん、背中にうんこしてごめんねー

カニさんもろた、カニさんもろたよー

あんなに元の飼い主さんにべったりだったのに、情の深いカラスでこんなことってあるんだと驚きました。

トラウマがあって女性嫌いだけれど、わたしのこともゆっくりと受け入れてくれて、その時骨折していた足の治療もさせてくれました。

捕まえて足にテーピングなんかして嫌われるかなと思いましたが、意外にもおとなしく受け入れてくれたのです。

そしてわたし達は家族となりました。

あれから4年。

クーちゃんは熱烈に夫を愛し、日々を幸せに過ごしていました。

そんな子が、忽然と姿を消してしまった…

夫はかーくんが親に連れて行かれた時のようだと言っていました。

いや、もっと辛いでしょう。

こんな時に限って雨が降り出し、真っ暗になり、どんなに怖い思いをしているかと思うと胸が張り裂けそうでした。

 

翌朝も夜明けとともに探しましたがどこにもいません。

リーディングはできなくても、意識を飛ばして心の中で叫びます。
そこら中の鳥がざわめきます。

頭上を通る鳥達にクーちゃんを見なかった聞いてまわります。

誰それ?(ヒヨドリ)

カラスはみんな同じに見えるからわかんない。(スズメ)

見なかったわ、心配なのね。(キジバト)

見かけたら言っておくよ。(カラス)

コミュニケーションは人の言語ではないので表現しづらいのですが、だいたいこんな感じでした。

無関心だったり、親身だったり、反応は色々です。

うちに来るキジバトさんはとても優しくて、わたしを気遣うエネルギーで満ちていて、うっかり泣けてきました。

クーちゃんと同じ種類のハシブトガラスは、鳴くのを止めて話を聞いてくれました。

電柱の上から首を伸ばしてこちらを見つめてくるので、思い当たることでもあるのかと期待もしました。

しかし、その日は父の四十九日だったので一日中探すこともできず、外に餌を置いておきましたが帰ってきた気配はありませんでした。

優秀なシータヒーラー達にも頼り、あたりをつけて探しました。

クーちゃんは狭いところで飼われていたとは言え、五体満足で立派な翼があるので一息で数キロは飛べてしまいます。

夫は夕方も探しに出かけました。

心配をする夫にこれでもかと言葉をかけます。

「わたし達が信じてあげないと、クーちゃんが勇気を持てないよ」

「帰りたいと思うなら、きっと帰ってくるから大丈夫」

「創造主だって戻ってくるって言ったし」

「心配は呪いだから、愛と光を送ってあげて」

うん。と素直に頷く彼の上を言葉が滑っていきます。

 

その時ふと思い出したのです。

最近色々なことがあり、創造主に対する信頼というものが大きなテーマになっていました。

もちろん、信じています。

そうでなければこの仕事はできないし、現実が変わることもない。

だけど…最近は、完全に信じるというレベルを求めていました。

頭で考えるんじゃなくて。
ただ信じるって言うだけじゃなくて。

「完全に信頼してるってどゆこと?」

「揺るがず信じるって、どの程度の出来事で実感できるの?」

「そもそもこんな質問してる時点で信頼が足りてないんじゃない?」

瞑想をしながらそんな問いかけをしていたのです。

まさか

これが答え?

その話をシータの先生にしたら

「そりゃすごい。わたしを最高のヒーラーにしてくださいって言ったも同然だな。」

ひいい。

その直後にこの出来事。

「創造主を完全に信頼する」の定義がハッキリとしていくのを感じました。

 

3日目。

わたしの中で帰ってくる期限の日。
野生に帰るタイミングの子以外は72時間以内に帰ってくるというのが経験上の期限です。

一人になり、渾身の集中力で意識を飛ばしクーちゃんを探しました。

何を見ても大丈夫。

創造主を信じて。

どんなことも最高最善の出来事。

この能力に感謝します。

ふと、ザラザラとした木の枝の感覚がしました。

足裏がゴツゴツして、すぐ横の幹は樹皮がむけています。

柿の木?栗の木?

どちらも近所にイヤというほど植わっています。

そこからなにが見える?

大きな橋が見えます。

そして

ああ、

外はなんて広いの…

こんなに広い世界があったなんて

世界を手にしたような雄大な気持ちでした。

この感覚は何を意味するのか…

「創造主、クーちゃんは行ってしまったの?」

「戻って来るよ」

うん、信じる。

どんな形でも戻ってくるのよね?」

「大丈夫だよ。ちゃんと帰るよ。」

「これが最善なのね?」

「もちろんだよ。真実を見てごらん。」

「もう、苦しみから学ぶのはやめたはずなのに。」

「これが一番優しい方法だよ。」

そう言われて、ふと、カラス友達の飼っていたカラスのカンタくんを思い出しました。

肝炎で苦しんで亡くなったカンタくん。

なんとかしようと友人は半狂乱であちこちの獣医さんを巡り、わたしのところへも泣きながら電話をしてきたものです。

あれは絶対に嫌だと思いました。

人に飼われたカラスは体に合わない餌の影響もあって、4歳前後でほぼみんな肝炎になります。

クーちゃんも引き取った時にはすでに肝臓が悪くなっていて、投薬治療をしてその後は食事の改善をし、シータヒーリングを始めてからはヒーリングを続けていました。

もう11歳、検査数値は改善したとは言え年をとったらどうなるか。

最悪のシナリオです。

一番優しい方法…

「それをわたし達みんなで選択したの?」

「大丈夫。最善のことしか起きていないよ。」

胸に安堵感が広がります。

落ち着いてハートの中心に意識を向けると、クーちゃんを感じることができます。

ああ、ずっとそばにいたんだ。

その日から探しに行くのをやめました。
そして戻ってくるのを信じて待つことにしました。

夫は毎日探しに出かけていましたが、区切りをつけるまで続けるつもりなのでしょう。

クーちゃんがいない寂しさは人間であるわたし達以外にも影響を与えていました。

にこちゃんの食欲がなくなってしまったのです。

ごはんの催促をしないのは病気の時だけというくらい、いつも食欲もりもりの彼女がごはんを残しています。

食べる回数も減りました。

歌も歌わない。

黙ってじっとしているだけ。

同じハシブトガラス同士、仲が良かったふたり。

にこちゃんは脚が悪いのでケージから出るのをとても嫌がりますが、クーちゃんがケージの前まで遊びに来てくれるのは嬉しいようで、よくふたりでへんてこりんな歌を歌ったりしていました。

にこちゃんも4歳で引き取った子で、来た当時は気難しい子でした。

前の飼い主さんが持て余し気味で相談してきたのです。

初めての友達だったクーちゃん。

にこちゃんは彼がいなくなったのをちゃんと認識していました。

ふわふわの頭を撫でると、心の張りがなくしぼんだ感じが伝わってきます。

きっと、こちらのしぼんだ心も伝わっているでしょう。

クーちゃんに会いたいね。

バカみたいに元気なのはゴマちゃんだけだねえ。
彼の大騒ぎが、とても救いになりました。

この声が外にいるクーちゃんに聞こえないはずはありません。

スズメ達だって庭で大賑わいだし。

帰ろうと思えば帰れる。

帰りたくないはずない。

それでも帰らないのは、理由があるから。

 

そして、8日目の明け方。

草むらでボーッとつっ立っているクーちゃんが夢に出てきました。

 

後編に続く

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